デンマーク発祥の「森のようちえん」。日本で広がり始めた魅力とは?

自然のなかで幼児教育や保育をする「森のようちえん」。デンマークの1人のお母さんが、自分の子どもとお隣の子どもの保育を森の中でしたのが始まりと言われる活動が、いま日本でも広がりを見せている。田舎暮らしの本4月号では、長野県の飯綱高原の自然をフィールドにした「こどもの森幼稚園」の様子をご紹介。(文・写真/新田穂高)

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 森のようちえんがデンマークで始まったのは、1950年代半ばのこと。その後広がったドイツでは、年間を通じてほぼ毎日森に出かけ、五感を使って活動し、子どもの自主性を尊重する理念のもと、約500の「森のようちえん」が活動している。
 森のようちえん全国ネットワーク運営委員長・内田幸一さんが長野市郊外の飯綱(いいづな)高原で「こどもの森幼稚園」の前身「子どもの森幼児教室」を始めたのは1983年。当時、自然を生かした保育や幼児教育がほかにも各地で生まれたが、こうした活動は子どもたちの自然離れがいっそう進む2000年以降、「森のようちえん」として本格的に広がり始めた。
 2008年に設立された「森のようちえん全国ネットワーク」では、大切にしたいこととして、次の4つを掲げる。「自然は友達」「いっぱい遊ぶ」「自然を感じる」「自分で考える」。内田さんは言う。「森や野原、田んぼや畑。自然のなかで遊ぶのはもちろんですが、子どもたちが『自分で考える』ために、大人がかかわる部分をできるだけ少なくして子ども本来の時間を確保する。それは『森のようちえん』の大きな特徴でしょう」
 これまでの幼稚園や保育園と違う新しい教育を提唱するわけではない。むしろ「森のようちえん」は、「健康で安全な生活」「集団生活への適応」「身近な自然への興味」「言葉を正しく使う」「自由な表現活動」といった、幼児教育に求められる目的へのいちばんの近道だと言う。「例えばお店屋さんごっこは、野外なら子どもは泥や葉っぱ、石ころで好きなお店ができますが、室内でいろんなお店をするには大人の準備が必要です」
 いま、日本全国で「森のようちえん」を提唱する団体は150カ所ほど。だが、大きいところでは類似の活動をする幼稚園や保育園、小さなところでは自主保育やお散歩グループなど、すべて数えれば数千にもなると内田さんは見積もる。「バブルの少し前、80年代は教育産業が成長して、お母さんたちは多くの情報にさらされるようになりました。インターネットやスマホの時代になるとさらに加速して、いったい何が正しいのか、社会にも子育てにも逆に不安が大きくなってしまった。自然派の人たちは、そんな状況から離れた落ち着いた世界を求め始めます。『森のようちえん』もその1つなんですよ」

 「こどもの森幼稚園」は標高1050mの高原にある。子どもたちは約2000坪の起伏のある敷地を中心に、森、沢、田んぼなど周辺の自然をフィールドに過ごす。訪ねた2月は雪がどっさり。ログハウスの園舎の前は子どもスキー場のよう。長野の市街地から30分以上かけてバス通園する子が多いと事前に聞いて「大変だなあ」と思ったが、この環境なら、毎日来たい!
 お弁当の時間までは雪遊び。ソリで滑る子、雪のトンネルをつくる子、木に登る子、雪に飛び降りる子、雪の上に寝そべって、斜面をごろごろ転がる子。友達同士、思い思いに遊ぶ。男の子のソリがジャンプしながら一気に斜面を駆け下りる。「あの子はソリで1番なんだ」。隣にいた子が得意げに教えてくれた。
「ソリのジャンプ、大人が真似すると腰傷めるんですよね」と笑う先生が、魔法のじゅうたんを持ってきた。特大のブルーシート。みんなを乗せて滑り出す。下まで着いたら、みんなでじゅうたんを持って上まで戻る。滑って上って、滑って上って。じゅうたんに乗る子がだんだん増える。さあ、喜色満面で出発!

 こどもの森幼稚園の子どもたちは、朝、バスを降りると斜面のてっぺんにある園舎まで歩く。「園舎は、あえていちばん奥に建てたんです。入り口に建てたら、山がわざわざ出かける場所になってしまいますから。しかも上の園舎からは、遊んでいる子どもたちが全部見渡せます」と語る内田さんは、現園長を務める妻の明子さん(60歳)とともに、もとは都内の幼稚園に10年近く勤務していた。
「渋谷駅の近くでしたが、庭はでこぼこで木が茂ってました」
 2人の生まれは池袋と代々木。50年前は野原や畑のあるのどかな場所で、自然のなかで育った記憶がある。だが大人になったとき風景は一変。それだけに「子どもは自然のなかで」の思いが強かった。バックパックで巡ったドイツや北欧では、子どもたちが町の隣にある森で遊び、雨が降ってもレインコートを着て森を散歩しているのを知った。
「それで、独立して自然とふれあえる幼稚園をつくろうと。でも地価の高い東京近郊では難しい。そんなとき、知り合いのロッジがあった飯綱高原の土地に出会ったんです」
 こうして高原で教室を始めた1年目。集まったのは6人。
「小さい子もいて、子ども預かりの延長みたいでした。森のようちえんとして注目されるのは、ここ10年のことですよ」

詳しい情報は、78ページからの「森のようちえんですくすく子育て」にてご確認ください。

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