フィンランド北部のロヴァニエミという町にあるテーマパーク「サンタクロース村」。
世界じゅうからサンタファンが訪れる観光名所なのですが、ここの売りはサンタさんに謁見できるアトラクション。はりきって正装(?)してきたノロは、謁見待ちの観光客にはもちろん、サンタさんにも大ウケでした。
赤い帽子に、おへそのあたりまで伸ばした真っ白な(付け)ひげ、足元はトナカイの毛皮で出来た巨大な靴……そんな期待に違わぬイデタチのリアルサンタさん。
フィンランド人なのか、かなりの巨体で、椅子に腰掛けているにもかかわらず、立っている僕と同じくらいの目線の高さです。
‐‐Where are you from? サンタさんがゆっくり口を開きました。
「We are from Japan!」と答えると、
‐‐Mori no yosei mitai desune.
「?」 僕らが目を白黒させていると、
‐‐モリのヨウセイみたいですネ。ネコのことですョ。
なんとニホンゴだったのです。でも、どこでそんなフレーズ覚えたの!?
サンタさんは続けます。
‐‐ニホンはどこから?
「東京です」
‐‐トウキョウのどこ?
「 む、武蔵野市ですけど……」
‐‐おー、ムサシノ行ったことあります。サンタのシゴトで行きました。
びっくり! 完全に日本語で会話をしています。
言っておきますが、僕らは予約して謁見に来ているわけではありません。アポなしなのに目の前には日本語を操るサンタさん。しかも武蔵野市て……。
謁見は驚きあり笑いありで、サンタさんのエンターテイナーぶりに感心させられることしきり。
この続きは拙著に書きましたので、ぜひそちらもお読みください。
(treasures編集部注:「世界を旅するネコ」<小社刊>P.64~掲載)
サンタクロース村を後にして向かったのは、ヨーロッパの最北端、ノルウェーの「ノールカップ岬」。
ここまで来たからには白夜名物、夏の沈まない太陽(=ミッドナイト・サン)を、ぜひともヨーロッパ最北端の岬で見ておきたかったのです。
しかも今夜がこの夏の最終日。行かない理由はありません!
ロヴァニエミからノールカップに至る700kmはフィンランドの森と湖、ノルウェーのツンドラ地帯を抜ける、絶景ルート……のはずなのですが、なにしろサンタクロース村でのんびりしすぎた僕らには、残された時間がありません。休憩もそこそこに先を急ぎます。
そんな中、行く手を阻む最大の「敵」が、なんとトナカイ。
ラップランド地方には、先住民族であるサーミ人によって放牧されたトナカイがたくさん棲息しており、道路をわがもの顔で歩くその群れをやり過ごすために、しばしば渋滞が起きるほどなのです……。
北欧のドライバーは、サーミ文化へのレスペクトもあり、そんなトナカイをクラクションで追い払ったりすることなく、通過し終えるまでじっと待つのですが、ミッドナイト・サンのタイムリミットが迫る僕にはそんな余裕などなく、脂汗をかきながらハンドルを握りしめてヤキモキさせられるのなんの……。
ノロはというと、見たこともないトナカイたちにビビって後部座席に逃げたかと思うと、そのまま眠りこけてしまいました。
サンタさんにうつつを抜かし、トナカイに構っていたおかげで時間も体力もギリギリになりましたが、0:00直前に無事にノールカップ岬に到着。
なんとかその夏最後のミッドナイト・サンを拝むことが出来たのでした。
ノロのひとこと
「これで夜中の0:00なノダ!ほんとに日がしずまないノダ!」
*次回は1/8(日)更新予定です
illustration: Tomoyuki Okamoto
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■著者プロフィール
平松謙三(ひらまつ けんぞう)
1969年、岡山県生まれ。
2002年から現在まで、黒猫の「ノロ」と37カ国を旅し、世界の美しい風景とノロを写真に収め、書籍やカレンダーなどを通して発表している。
ふだんは八ヶ岳南麓の山小屋に暮らし、フリーで、グラフィックデザイン、WEBディレクションなどを行う。
趣味は自転車と薪作り。
世界を旅するネコ(小社刊)
クロネコノロの飛行機便、37ヵ国へ
著者:平松謙三 写真・文
アルプス、地中海、ピラミッド……
37ヵ国を巡ったノダ。
飛行機も客室で!? 旅する猫のフォトエッセイ。
童話やアニメの話ではなく、本当に世界中を旅するネコがいます!黒猫の「ノロ」は、2002年から2016年現在まで、飼い主の平松さんと一緒に世界37ヵ国以上を旅行しました。ヨーロッパを中心にアフリカから中近東まで、美しい風景とノロの写真に、思わずほっこりする旅エピソード(猫エピソード)がぎっしり。ペットと海外旅行をするためのハウツーも満載です。加えて、アートディレクター・寄藤文平氏による装丁も光ります。
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「The Official NOROSHOP」
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